小生を始め世界中の多くの人々や、国連の決議が未採択のままアメリカの一国一強主義の力による戦争がはじまりました。

小生は第一次大戦後アメリカのウィルソン大統領の呼びかけで世界の人々が集まって結成された国際連合の取り決めをそのアメリカが簡単に破棄するとは考えも及びませんでした。
しかし、今回は国連加盟国のほとんどの国々の人達は国連の持つ意味と価値を本当に理解していたと言えるでしょう。
本来であれば世界最強のアメリカを敵に回すのを怖がるのが筋ですが、国連決議において正々堂々と平和の主張を唱え、アメリカの力による侵略を抑えようとしました。
しかしながらアメリカの力は非常に強かったわけです。

さて、今回のコラムの大量破壊兵器についてお話いたします。
アメリカの今回行っている戦争の大義名分はイラクの大量破壊兵器の破棄と言うことでした。
しかし、ここでもう一度冷静に考え判断してみますと大量破壊兵器とは一体何をさして言っているのでしょうか。
私達は近年アメリカが仕掛ける戦争についてマスコミなどで目のあたりに見てまいりました。

第一次湾岸戦争やアフガン戦争等で使われたハイテク兵器や、原子爆弾に相当する特殊爆弾等、又弾道ミサイル、空母や船艦、レーダーに映らない戦闘爆撃機等など。
これらは大量破壊兵器とは言わないのでしょうか?
この三つの戦争を通して大量破壊兵器の定義と言うのもが見えてきました。
それは超大国の都合の良い侵略言葉と言えるものです。
小生の前のコラムにも何度も登場いたしましたがアメリカの100年先の国家戦略に基いた戦争はこれから先も続く事でしょう。

今回のイラク戦争についてお話をしますとアメリカは第二位の石油の産油国イラクを自国の支配下におく事でした。
1991年の湾岸戦争の目的は世界最大の石油産地中東にアメリカ軍を配置する事で有りました。
その為アメリカは1980年代に起こったイラク・イラン戦争ではイラクに同盟国として資金援助し、大量破壊兵器である核兵器や化学兵器の作り方を教え、施設を与えました。
その後アメリカのいつも使うやり方で今度はイラクに隣国クエートを占領させる演出を行いました。
ここでフセイン大統領がアメリカの戦略の意図を理解していればクエートを侵略する事は無かったのですが、大国の能力の大きさには彼は気づかなかったわけです。
イラクがクエートを侵略したと同時にアメリカは直ぐに梯子を外し、今度は同盟国イラク特にサダムフセインを中東の悪の枢軸に仕立てることによってイラクの脅威を世界に宣伝し、中東の産油国サウジアラビアやクエートの産油国に米軍を駐留させ一部支配下におく事に成功したわけです。
そして十数年が経った現在そのサウジアラビアやクエートがアメリカによる一部統治を嫌がりはじめた為、更なる大博打であるイラク戦争へと突入せざるを得なくなりました。
今アメリカの石油は一説には20年持たないと言われています。
その様な中でイラクの地下に埋蔵している石油はサウジアラビアを上回ると言われており、おまけに湾岸戦争以降アメリカによる経済封鎖が功をそうしてイラクの石油開発の余地が甚大だと言う事です。
参考までに言いますとサウジアラビアは現在一万本以上の油井を掘っていますが、現在イラクではわずか100本足らずといわれています。
それだけアメリカにとっては喉から手が出るほど油田が豊富なイラクがほしいわけです。
今回戦争がはじまってアメリカと強調路線の国などから今回の戦争の本音がちらほらと聞こえてくるようになりました。
ある国の首相は「イラクの石油資源の代金を一旦国連に収めてそれをあらためてイラク復興に使う」と言うなんともおかしな理由を世界に向けて話していました。
ここに今回の戦争の大きな目的が暴露されたと言っても過言ではないでしょう。

1991年の湾岸戦争はたとえアメリカが誘導したとは言え、イラクがクエートを侵略したと言う大義名分がありました。
しかし、今回の英米のイラク攻撃は石油大国イラクを侵略目的する事以外理由が有りません。
小国が他国を侵略する事に敏感な国が、大国が他国を侵略する事に何の異議も唱えないと言うのは理由がたつ事ではありません。
今回のイラク戦争の目的の大量破壊兵器の破棄においてもイラクは国連査察団の元で国連の言われるがままに兵器を破棄している場面を何度もテレビの画面で見る事が出来ました。
小生からしてみるとそれは大量破壊兵器と言えるものではなく、自国を守る為の最低限度の武器にしか見えませんでした。

ここで日本に関する重大な安全保障や国益について考える時がきていると言えるでしょう。
日本国政府はアメリカのイラク戦に参戦いたしました。
その理由は日米安全保障条約に基いて決定したと言っているようですが、小生は遥か彼方のイラクの脅威が日米安全保障条約ましてや日本の国益の重大な脅威になるとは思いません。
それより隣国北朝鮮による日本に対する脅威は一体誰が取り除いてくれると言うのでしょうか。
北朝鮮は日本に対し数々の安全保障上の過ちを犯しております。
そして最近では日本領海に向けミサイルを打ち込んだり、更に核兵器まで搭載したミサイルを配備する準備をしております。
その様な国に対しアメリカは一体何をするのでしょうか?
イラクにはアメリカの喉から手が出るほどほしい油田が手付かづのまま眠っております。
しかし、北朝鮮にはアメリカのほしい物は何一つ無いのが現状です。
昨日アメリカの国防省の高官は北朝鮮の挑発についてこう語りました。
「今イラク戦で忙しいので北朝鮮のミサイル発射の情報等はどうでもいい。無視するだけだ・・・」
しかし、皆さん北朝鮮のミサイルは全て日本を射程距離に置いているのですよ!
その様な発言を簡単にすると言う事は日本の安全保障についてはあまり頭に無いと言う事でしょう。
これも先のコラムで書いたと思いますがアメリカの対日本に対する本質的な戦略は、と言うと・・・
日本はイラクと経済規模は違っていましたが、戦前の国家の本質は同じでありました。
その日本はアメリカによって真珠湾攻撃を誘導され、戦争に突入せざるを得なくなりました。
その時もアメリカは日本を悪の枢軸や侵略国、帝国などと揶揄し世界から孤立させて行きました。
その後日本を敗戦に追い込むや日本国憲法の改定や日米安全保障条約を締結させ、日米安保の名のもとに日本全土を米軍に占領させられております。
小生はあえて占領と言うのも今の日本がアメリカの国力の保護無しでは成立し得ない為です。
しかし、この安全保障条約もよく読んでみると名前は安全保障になっているが何一つ日本の安全保障することは書かれていない事も奇妙な事であります。(英文の原文安全保障条約によると)
つまりアメリカは日本の軍事危機に対し、日米安保上は何の責任も義務もアメリカには無いわけです。
しかし、現在までアメリカはその事を大義名分とし日本からアメリカのアメリカ軍駐留費や戦費の一部を上納させ続けさせている事は既成事実です。

小生は日本の国益に基いて今回のイラク戦 参戦を決めたと言う小泉総理の声が流れてきたとき背筋が寒くなるのを感じました。
首相はテレビ演説で「アメリカは、日本に対する武力行使はアメリカに対する武力行使で同じと考える唯一の同盟国である」と言ってのけました。

それであれば北朝鮮による日本人拉致はアメリカ人拉致と同じであり、1998831日に日本に向けて発射されたテポドンはアメリカに向けて発射された物であり、不審船の日本侵入はアメリカ本土に侵入したことであり、最近北朝鮮が発射準備をしている核兵器搭載のノドンの発射準備は日本に対する脅威と同じアメリカに対する脅威のはずであります。

ところが1998年北朝鮮にミサイルを日本沿岸に打ち込まれた後、アメリカは北朝鮮に対し何の警告も与えないばかりか米と石油を与えました。
そして現在に至っても北朝鮮に対しては経済封鎖を始め何の対抗措置もとっておりません。
イラクに対してのアメリカがとっていた経済封鎖を始め数々の嫌がらせは一体何だったのでしょうか?
そして唯一の同盟国と小泉首相が自負しているアメリカは日本に対してこのままの状態を続けるのでしょうか?
これがアメリカ流の日米安全保障条約というものでしょうか?

小生はこのイラク戦争を考えたとき日本の国益について更に追求してみました。
その結果アメリカの100年先の国家戦略に基く国益計算と日本の目先の国益計算との間に大きな違いがあると言わざるをおえません。
今回国連参カ国、200カ国の内この戦争に反対した国が155カ国。
賛成した国が45カ国。
その賛成した国の中に日本が入っております。
この事はこれから10年先100年先の日本の国家戦略と国益に一体プラスとなるのでしょうか?
マイナスとなるのでしょうか?
最後に小生がこのコラムの最後にお話したい事は今回の戦争によって世界は二つに割れてしまったと言う事です。
そして以前あった冷戦時代が又来る予感がしてなりません。
その事は「大米帝国と大英帝国」という2つの強大な国家が誕生したと言う事であり、その他の国もそれに追順して行く事でしょう。
しかし、その事はこれから更なるテロの脅威と更なる戦争の始まりと言えるでしょう。
その事は釈迦の説法にある

「殺そうと闘争する人々を見よ、武器を執って打とうとした事から恐怖が生じたのである」

まさにその通りであります。
今回のコラムのテーマである大量破壊兵器が世界の隅々から消え去るのを小生は願うものです。

日海

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